かあさん/小原あき
 
書き留めていたはずの詩が
一晩のうちに
家出をしてしまったらしい


枕元にあるのは
真っ白な紙の切れ端で
紙を失くして
彼らは
ばらばらになってしまわないだろうか


雨が降りだしたので
窓を閉めようとしたら
「あ」が落ちていた
やはり彼らは
ばらばらになったのだ
「あ」を拾い上げると
ぐったりしていた
彼らはばらばらで
生きてはいけないのかもしれない


「あ」を見ていると
寂しくなった
病床に臥す
母みたいだ


雨上がり
水溜まりに
「ぬ」が浮かんでいた
もう冷えきっていて
死んでいるようだった


わたしの
家出し
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