君の背中に追いつかない/秋桜優紀
 
悠人が、これを貴女に、って」
 まだ若いであろう悠人の母親が、私にそう言った。目尻にはうっすらと涙が溜まっているのがわかる。
「九百九十九羽、だそうです」
 目元が悠人に良く似た父親が、そう続ける。
 私はそれに答えることもできずに、鶴たちの織り成す色彩の世界を覗き続けていた。するとその中に、まだ折られていない折り紙が入っているのを見つけた。紅白のそれを袋から摘み上げると、その裏面には既に「パワーアップ」が施されていた。
 私はその文字を一心不乱に見つめた。やがて悠人のご両親が去り、母も仕事に行った後も、日が傾き始めた部屋のベッドの上で、なおもそれを見つめていた。
 そこには、乱雑な字
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