君の背中に追いつかない/秋桜優紀
む。悲しみではない感情で、胸のあの場所が張り裂けそうに痛む。それでも、涙を流すことはできない。枯れきった涙がこの痛みを代弁してくれることは、ない。
昨晩、失ったはずだと思っていた悠人は、あのとき実はすぐ傍にいたのだ。こうして、死という大きな壁に実際に隔てられて初めて、そのことに気付いた。死とは、まるで次元の違う距離に存在するものだったのだ。二度と会えない。あの小さくてあたたかな身体を抱き締めることは、二度と叶わない。
二度と、会えない。
翌日、悠人の御両親が私の病室を訪ねてきた。そのとき居合わせた母と軽く挨拶を交わしてから、こっちに向き直った。
この二人は、きっと私よりも辛い思
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