君の背中に追いつかない/秋桜優紀
 
てね。いつ発作が起きて死んでも全くおかしくない状態だったのよ。最近は安定していて、少しも発作はなかったけれど」
 そうだ。悠人はこの病院に随分長いこと入院しているようではあった。けれど、悠人と一緒にいると、その明るさのせいで、彼が病人だということさえ忘れてしまう。だから、悠人が入院している理由について話したことなど、今までただの一度もなかったのだ。
 私が、悠人が夜に訪ねて来たことを話すと、彼女は信じられないといった風に驚いた。
「だってあの子、その時間には発作の予兆が始まってたはずよ。ナースコールも押さずにここまで来たって言うの?」
悠人は、微塵も苦しそうな表情を見せていなかった。それで
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