君の背中に追いつかない/秋桜優紀
めた。
これは罰なのか。自分勝手な都合で彼を切り捨てた、身勝手で傲慢で愚かな私に対する、許されざる罪の証なのか。だったら私には、これを拒絶する権利なんてきっとない。いや、あるわけが――ない。
「うん……わかった」
悠人は私が嗚咽混じりに頷くのを見届けると、腕からするりと抜けて、暗い廊下をぺたぺたと歩いていった。思いっきり抱き締めていたはずの私の腕には、実際には全く力がこもっていなかったのだ。
生きる意味はこれで、全てなくなった。わかってはいた、あのときから。私が悠人を突き放したあのとき、あの瞬間から、悠人は私の傍からいなくなってしまっていたのだ。わかってはいた。いたけれど――
――
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