君の背中に追いつかない/秋桜優紀
 
は全て、あの日涙に流れ出てしまった。
 私は随分無口になった。悠人が来ていた頃は、母にも色々と悠人のことを話したものだったけれど、それも今はもうない。「最近、あの子来ないのね」と言われたことにもイライラして、短く「うん」と答えただけだった。
 そう。あの日から悠人は、本当にただの一度も来なくなった。たまに検査で病室を出たときに彼の姿を見たことさえ、一度もない。悠人が私の要請に応えただけの話なのだけれど、薄情じゃないかと、見当違いに腹が立つ。
 悠人は今もまだ一人、千羽鶴を折っているのだろうか。「悠人スペシャル」に、「パワーアップ」を施しながら。そんな姿を想像するだけで、思わず涙が出そうになる
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