君の背中に追いつかない/秋桜優紀
思っていたこと。ずっとずっとずっと、決して手放すことのない大切な感情。
――悠人、あんたが愛しい。誰よりも、何よりも。本当に――愛しいよ。
そして、涙は枯れた。
悠人が来なくなって、二週間が過ぎた。
その頃には三日に一回は発作に襲われるようになって、医師にも遂に、余命一ヶ月と告げられた。宣告を受けたときは、ようやく死ねるのだと、昏い笑みを浮かべさえしたものだ。
両親は完全に憔悴しきっていた。申し訳ないとは思うけれど、こればっかりは仕方がない。ずっとわかっていたことではないかと、死に瀕している本人の方が、完全に冷めきった目で痩せた中年の男女を見つめていた。もう、あたたかな感情は全
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