君の背中に追いつかない/秋桜優紀
そうして二ヶ月ほどが過ぎ、季節はすっかり夏に移り変わっていた。ギラギラと照りつける太陽の下、子供たちは海や山に繰り出し、若い男女は腕を組みながら縁日の屋台を回る。何というか、世間ではこの暑い季節を、情熱とでも呼ぶべき煌びやかなエネルギーでもって謳歌していた。
一方、病院から出られない私は、阿呆みたいに鳴く蝉の声に耳を塞ぎ、毎朝起きる度に滲んでいる汗の不快感に悶え、窓から忍び込んでくる熱気に顔をしかめることしかできなかった。夏なんて。
それでも悠人がいることは、私にとって大きな救いとなっていた。新しい水着を着て海に繰り出したり、浴衣を着て屋台で金魚掬いに興じたりしなくても、私は随分楽しい
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