君の背中に追いつかない/秋桜優紀
 
しい毎日を送れていたように思える。
 それでも、病状を示す様々な数値は日を追う毎に悪くなっていて、テレビや小説に出てくるような奇跡なんて、やっぱり起きないんだと実感した。私は死ぬ。それを大前提として、私はしばらくの余生を生きなければならないのだ。苦しい。悠人がいなかったら、とっくに私は生きていなかっただろうと、やっぱり思う。
 そんなある日、母親から差し入れられたひいきの作家の新作を読んでいる私の元に、悠人が大量の折り紙を持って現れた。
「今日は折り紙?」
 その中の赤い一枚を指で摘んで悠人に問う。
「まあね。でも、ただの折り紙じゃないんだぜ」
 悠人はにい、と笑って、素早く黒の色紙を
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