君の背中に追いつかない/秋桜優紀
から」
男の子に向かって抑えきれない笑みを浮かべて、私は言う。
「良かったら、また来てね」
嬉しかったのだ。彼といると、誰といるよりもずっと嬉しい。あの嫌な感情のことを考えなくてよくなるだけではない。彼の、計算や打算の無い率直な感情や、ぶっきらぼうな物言いの影に見え隠れする彼独自の優しさや、そんな色々が、私にとってはとても価値あるものとして感じられる。彼が、単に深いことを考えない子供だからと言うことだけではない。それだけでは説明できないほど遥かに大きいのだ、この喜びは。
「君といるの、すっごく楽しいから」
「ゆうと」
「え?」
男の子の流れを断った発言に、戸惑う。
「俺の名前
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