君の背中に追いつかない/秋桜優紀
 
、やべっと小さく呟いた。
「俺、もう戻らなきゃ」
「そう。わざわざありがとね」
 男の子は椅子から立ち上がって振り返ると、そこに大量の罠が仕掛けられているのを思い出して、一瞬青ざめた後、また変な具合に身体を捻って出て行こうとする。
「気をつけてね」
 嫌味含みでそう言うと、男の子がおかしな体勢のままに振り向いた。よく立ってられるな、と感心してしまう。
「危ねぇなぁ。病院で死人が出るなんてシャレにならないぞ」
「優秀なお医者様がたくさんいるから多分大丈夫でしょう。多分」
 「多分」の部分に力を込めて言うと、男の子はギョッとしたように私の顔を覗き込んだ。
「ま、今度は全部外しとくから
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