R305/木屋 亞万
人殺しの鬼と化してしまって
どこかの片平なぎさに追い詰められるかもしれない
エンディング10分前に、この東尋坊で泣き崩れるのだ
人を殺して良いなんていう理不尽な法律さえなければ、私は…
私は人をこんなに殺さなかった
なんて、悲劇のヒロインのように
不憫さを振りまいてのたまうのだ
えへらえへらと断崖絶壁で
そのような妄想に酔っ払っていると
四歳くらいの男の子が
ぽーにょ、ぽーにょ、ぽにょっと歌っている
お門違いの崖違いだよ僕ちゃん
と言いながら、デレレーンと笑う私に
保護者は少し防衛気味だ
バイクに跨り、サスペンスの崖を
後にしようとしたとき
どりゃー
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