午後十一時のワルツ/
結城 森士
近づいてきては
また去っていく
赤く黒い唾を、吐く
右手の薬指の、感覚を失う
何も分からない
ただ、血の匂いがする
遠くで猫が鳴いている
次第に大きくなっていく
やがて
やってくる眩暈に備えて
三度、目を開く
3.
痛みをこらえて再び寝室に戻り
テレビをつけるとニュースキャスターが
酷くまじめな顔をして午後十一時を伝えていた
[レモン]
確かに夕方の五時に待ち合わせをして
黒枝
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