午後十一時のワルツ/結城 森士
 
黒枝と二人で行き付けのバーに入った
そこで頼んだオリジナルカクテル:彗星
バーテンの手から氷が落とされて
やがて夜になった
付き合って一周年の
ささやかなお祝いだった

六度目の氷が落とされたあと
(レモンが欲しい、街燈の下で黒枝に支えられて歩いていた
(レモンが欲しいよ、黒枝のアパートに寄って
(レモンが欲しいんだ、彼女にもたれ掛かった
(黒枝、買ってきてくれないか

うん分かった(彼女は笑顔で言った
すぐ戻ってくるからベッドで寝てていいよ(そして俺は彼女のベッドで

とても嫌な夢を見た。覚えているのは、ニュース番組のアナウンサーが、酷くまじめな顔で午後十一時を知らせていたこと。何かが近づいては、また去っていく。

不確かな朝だった


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