いつか、約束の/夏野雨
この先もずっとこのひとが
ひとりで旅にでるはめになりませんようにって
こっそり祈った
小学校から帰る途中
夜を走るバスの
つめたい窓硝子に
額を押し付けて
寝たふりしながら
ねえ僕らはおんなじ夜にいるのかな
暗い道路を疾走するこの速度は
きみに近づくあるいは遠ざかるこの距離は
いつも均等なのかな
あやとりの糸をひっぱるように
どこまでも一本の線としてつながっているのかな
さしだされたゆびのさきに
誰かの目に
うつくしいかたちに
見えたりするのかな
そうだといい
ほんとうは
ほんとうはね
山奥の廃校に一緒に住んでくれなくたっていい
ただここ
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