段差のない家/木屋 亞万
 
ないと」
と言いながら、ガソリンを携行缶から先生に注ぎ込んだ後
鍵を差し込み、エンジンをかけてあげていた

「やあ、悪いね、心配させてしまって。3日後には退院できるらしいから、是非また家にも遊びに来なさい。君くらいだよ、わざわざ病院まで来てくれたのは」
先生はフロントガラスにウォッシャー液を出して、ワイパーでゴシゴシしながら、そう言った

「そうね、ぜひ来て頂戴、主人のために改築したんだから。あなたにも見てもらいたいもの。これ住所だから」
奥さんはワックスを塗る手を休めて、住所を書いたメモを手渡してくれた

先生の家には前に一度だけ行ったことがあった
その時はごく普通の庭付き
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