幽食/ヨルノテガム
パラパラと舞い落ちる風情は桜の季節ねと、
手をヒラヒラとお豆腐のまわりで遊ばせて
わたしはひとしきり豆腐踊りをして過ごした
よ! 豆腐奴! と拍手喝采、お座敷の華となって
また来てくれ と また来るワ でスターな気分でサヨウナラ、
幕は暗転へ落ちた
ポツリと青白い豆腐を前にわたしは元どおり直面し
うまく食べれないわ、うまく掴めないわを小声で洩らした
みずみずしいお豆腐もどこか力なく壁面みたく固まって見えて
わたしのせいね と何だかおセンチ入って
背骨が抜けてしまうような空虚を想った
空虚っていいわね、わたしみたい、懐かしい昔の初動の、
その前の前、お豆腐みたいに真っ
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