回雪の彼方/木屋 亞万
 
いつか見た犬と少年のように
天に召されていくところだった
灰色の海を背に明るいネオンの街を抜け
電飾が華やかな塔の周りをゆっくりと旋回し
雲を越えて天へと昇っていく

右脇の天使と左脇の天使が会話を始める
「幸せを届けることができなかったみたいだね」
「途中で零してしまったらしいよ」
「残念だったねえ、もうひと頑張りで結ばれたのに」
「ああ、幸せを見つけられたのに、もったいないよ」
「また一からやり直しだ」
「この子はこれで四回目だね」
「早く天使になれるといいね」
「そうだね、今度は頑張って」という声を最後に
両脇を支える天使の手の力がわずかに緩まり
落下する直前
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