回雪の彼方/木屋 亞万
直前の浮遊感を味わう
その刹那、両脇を激しく抱え上げられる
急上昇すると同時に鮮烈な光が両目を襲う
大きな手が背中を叩き、僕に罰を与える
自分が情けなくて悔しくて思い切り泣き叫んだ
温かいお湯につけられ、身体を柔らかいもので拭かれる
「元気な男の子ですよ」と白い服の女性が笑う
汗をかきながら安堵したように微笑む母親の側へ運ばれ
僕は五度目の誕生を経験した
空気は肺を乾かしたけれど、身体は湿ったまま
温かすぎる部屋の空気を受けて
どうしても泣き止むことができなかった
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