回雪の彼方/木屋 亞万
 

すぐに風と波に消されてしまうとしても道ができるのだ
胸の中をざらつかせる悩みに比べれば
砂の方が触れられるだけ可愛げがあるように思えた

あの人が偶然に近くを通らないだろうかとか
自分を探してやって来てくれないだろうかなんて
甘く温い考えに元気よく背中を押されて
ますます砂の中に沈み込むようにして進んでいく
頭を占拠していく希望願望の類が
少しずつ夢の気配を帯びていき
気がつけば砂の中で眠っていた
風が砂の布団をかけてくれたので
吹きさらしのときよりも温かく
砂と海水に麻痺していた呼吸器は
虫の息を途絶えさせようとしていた
夢の中で自分は両脇を天使に抱えられ
いつ
[次のページ]
戻る   Point(0)