回雪の彼方/木屋 亞万
 
ら少しずつ冷たさは忍び寄り
四肢の感覚は拠点から奪われていく
足は付け根から丸ごと凍り
二本の氷柱のように伸びきっている
羽根も硝子細工のように固定され
想いの詰まった頭の先から真っ逆さまに落ちていく
灰色の海はトプンと僕を丸呑みしゴミだらけの砂浜に吐き出す
鼻の穴から突き上げてくる海水が目に沁みて涙が出てくる
足に絡みついた海草の束が寄せては返す波に遊ばれている

震える頬を引き締めて這うように砂浜を進んでいく
どこに向かうつもりなのか自分でもわかりはしない
胸の前に砂の山ができては左右に押されて分かれていく
自分の進んできた後ろには不細工な道ができているのだろう

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