暴力と責任、若しくは<善悪の彼岸>−「存在の彼方へ」を読んでみる11/もぐもぐ
 
(旧約聖書)は、一方で神の不条理かつ圧倒的な威力を受け入れながら、同時にそれを一定範囲で予測可能なものにしようとする試みであった。
だが、依然として、神は、契約をしていない、或いは契約をしていてもそれに違反した相手(氏族、民族)を殺すことについて、何らの躊躇いも覚えない。その及ぼす力は圧倒的なものである。契約者は、合理的な計算をするより以前に、その威力への畏怖から自ずと契約へと導かれる。

このような、「無起源的な威力」「理由なき、けれども自ずから服従を呼び求める威力」のイメージは、レヴィナスの議論のあちこちで顔を覗かせているように思われる。


第6節、<存在すること>と意味、と題さ
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