傷/石畑由紀子
わかる
愛されて育ったのだとおもいます
たぶん
うまく吸収することは
できなかったけど
*
私の右頬には
わりと大きな傷痕があります、真横に
すぅっと一本線の
おさないころ
世界はとてもわかりやすかった
あれから私には
わかりにくい傷もたくさんできました
ときどき、指先を透かして
ぽつぽつと点検してまわります
もっと
臆病になっていいのに
私はどうして
今も馬鹿みたいにまっすぐ走ってるんだろう
(おてんばだったから、ね)
生傷は
痛いけど是が非でも避けたいとはおもっていない
馬鹿みたい
なんじゃ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(13)