傷/石畑由紀子
 
わかる

愛されて育ったのだとおもいます
たぶん

うまく吸収することは
できなかったけど


  *


私の右頬には
わりと大きな傷痕があります、真横に
すぅっと一本線の

おさないころ
世界はとてもわかりやすかった

あれから私には
わかりにくい傷もたくさんできました
ときどき、指先を透かして
ぽつぽつと点検してまわります


もっと
臆病になっていいのに


私はどうして
今も馬鹿みたいにまっすぐ走ってるんだろう
 (おてんばだったから、ね)

生傷は
痛いけど是が非でも避けたいとはおもっていない
馬鹿みたい
なんじゃ
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