窓を叩くような/石川和広
 
ない喩えだけど

けど思い当たる恐い未来の出来事なんかなさそうだ
ケータイを見てみたがそんなことしたって仕方が
ないか

もう降りるべき駅が来てしまった
こんな暑いのにコートなんて着てられねえ
手に持つ 手に持ったらなんかみっともないが仕方ない

この駅からは夕焼けが見えなくなっている 
どうしても人の顔が目に焼きついて仕方がない
なんでだ 
それとか広告看板とかな
人の顔ってなんでこんなふうに見れば見るほど
じろじろ見ないほうがいいぜ知らない人だから
だけど俺だってなんだって知らないもの同士なんだぜ
なんでかしらんけど
あの娘も俺の親父も母も俺とはちがう存在や
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