いくつもの種類の赤/ホロウ・シカエルボク
 
るみたいに薄らいで、俺は時間の概念を半分忘れる、意識しない景色を見ていながら忘れているみたいに、表通りを過ぎる車ももう随分と少なくなっていた、数分おきに走りぬける何台かの車はまるで億劫な風が吹きながら漏らすぼやきのようだった、俺は少しの間目を閉じていて、幾度めかのその風の後で目を開けた、その目に見えたものは何ひとつ特別なものではなかった、俺自身の意識の構築に問題があるのだ、何もなかった、なんて、まるでデジタル時計のような虚しさだ、「そのあとで目を開けた時に見えたものは何ひとつ特別なものではなかった」そこにはどんな認識もない、紙芝居を見ている子どもが最後の一枚の絵柄をたまたま鮮明に覚えていた、という
[次のページ]
戻る   Point(1)