指定席/木屋 亞万
日を過ごしたい
と思ったところで
金魚には水槽しか世界ではない
狭く雑多な水槽の中に指定席がある
自由席はないので強制と言ってもいい
僕らと本当に同じだ
水槽から抜け出せた金魚は
もう少し狭い水槽に移る
ゆとりもあれば装飾もある
でも狭い、狭すぎるのだ
川や池に比べると遥かに
直方体だろうが球体だろうが
金魚は思い切り走れない
ただ小回りをきかせ小走りする
僕らはだらけた足で塾へ向かう
お腹が空いて唾液がスナック菓子を想う
胸骨の狭間に自我の死骸を溜めて
僕らはまた勉強をする
学校より無機質で洗練されているけれど
やはり狭い直方体の塾の教室
席は
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