指定席/木屋 亞万
席は基本的に自由なのだが
各々座る位置は自然と定着していて
窓際の隅が僕の指定席だ
教卓の前にはポニーテールの
赤更紗の金魚みたいな
赤いカーディガンと白いシャツを着て
魚みたいな曲線のシルエットで
口をぱくぱくさせてドーナツを食べている
狭い水槽の中は鬱屈としていて
虐めあい、おとしめあう僕らがいる
でも僕らは金魚ではないから
いつかは抜け出せるだろうと思う
ポニーテールのあの子と
水槽の外へ行きたい
どんなに自由な指定席でもいらない
もう座っていたくはない
胸骨を瀕死の尾びれが蹴った
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