指定席/木屋 亞万
授業を終わらせるチャイムが僕らに
仕舞い支度を促し、先生は
名残惜しそうに黒板の裾に触れて
開いた小さな穴へと3色の
チョークをぽとりぽとりと落とす
号令にやる気なく起立する僕らは
椅子と机の間が狭すぎて直立できない
物と子供らが押し合い窮屈な教室から
僕らはランドセルを棚から取り出して
だらけた足で逃げ出していく
僕らは縁日の金魚みたいだ
雑多な物に紛れていることと
実質的に水槽より教室が狭いことを思うと
和金の方がずっといい暮らしだ
それでいて綺麗な赤と白の肌
赤白黄で濁った僕らはどうしても醜い
金魚に帰る自然はないそうだ
もっと広いところで一日を
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