レヴィナスの芸術哲学−「存在の彼方へ」を読んでみる9/もぐもぐ
 
中の餅に「食べる」という「判断」は生じ得ない。「もっとよく見る」とか「無視する」というようなのはありうるが)。あるいは別の表現をすれば、「絵の中の餅」は、「本当の餅」としては「知覚」されない。「絵の中の餅」は、「本当の餅」という「知覚」にまでは至らない、「不十分な餅」である。
例えばプラトンは、そのイデア論において、絵画上の事物を真から遠ざかったものとして捉える(プラトンによれば「現実の事物」は真理である「イデア」の模写であり、「絵の中の事物」は「現実の事物」の模写であるから、「絵の中の事物」は真理から二重に遠ざかっているとする)。それと似て、「イメージ」であるところの「絵の中の事物」は、「現実
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