「大胆」な「懐疑論」と異なった「リアリティー(現実)」−「存在の彼方へ」を読んでみる8/もぐもぐ
 
いものがあると私は思う。

ヘーゲルは「現実」の「威力」を繰り返し語る。これは、単に「主観的」な私たちの「観念」を吹き飛ばしてしまう強力なものである。それだからこそ、こうした諸々の現実の経験を経て成長した「真の」精神をヘーゲルは論じるのだが(この辺りの構想はヘーゲルの「精神現象学」によく現れている)「現実」の「威力」、これは一体どのようなものなのか、ヘーゲルはそれを前提するだけで、特段主題化しては語らない。ヘーゲルが「同」とか「全体主義」の哲学者だという(かなり一面的な)断定も、ヘーゲルの言うこの「現実」の「威力」というものが一体何なのか、捉え方が相違しているために生じる主張であると思われる。
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