ナイフ/ホロウ・シカエルボク
ッシュを一枚抜き取って、机の上で少しずつ…時折指先に触れるぞくりとする冷たさに、私はうっとりとなった、その快感が増せば増すほど、これは絶対に誰にも気づかれてはならないことだ、という理性も極端に強くなった…その日から家を出るまで、両親にその行為が見つかることは一度も無かった、そもそも父は私が書斎に入ったことなどないと信じていたし、父の机の引き出しに何が入っているか私に分かるはずもないとそう信じていた、時々ナイフの刃先を調べて、おかしいなと思うことはあったかもしれない、だけどそれが私のせいだなんて到底考えることは無かっただろう―爪を研ぎながら父親のことを思い出すのは久しぶりだった―彼の葬式が終わってか
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