ナイフ/ホロウ・シカエルボク
 
されていた、私は小学校に出かけては少し早く家に帰り、避妊具なんかが(その時は何に使うものなのかまったく分からなかったけど)隠されている寝室の小部屋の引出しから書斎の鍵を取り、書斎でナイフを持ちその輝きにうっとりと溶けていたものだった…ある時、ある時だ…それがいつ頃のことだったのかは先に書いた通りはっきりとは思いだせない、その時の記憶はある意味で時間を超越した状態で私の胸のうちに存在している―私はその曇りの無い刃先で自らを傷つけてみたくなった、だけど身体に傷をつけて、父や母によからぬ疑いを抱かせたり、ナイフに触れたことを父に気づかれるのは絶対に嫌だった、だから慎重に爪を研いだのだ…父の部屋のティッシ
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