ナイフ/ホロウ・シカエルボク
 
や茶色の皮の鈍い光り具合に、それが何人もの人間を殺すことが出来るのだという認識早い時期から私は持っていた…実を言うとこのナイフはその父のナイフなのだ、家を飛び出すときに何本かを鞄に忍ばせて持ってきていた、父が嫌いだったのではない、私はナイフが好きだっただけだ―何の話をしていた?そう、爪を研ぐ話だ
父は私が書斎に近づくことを決して許さなかった、当然のことだ…だけど私はそれがなぜなのかちゃんと分っていたし、父の裏をかくことはいくらでも出来たから表向きは興味の無いふりをしていた―興味がない、そういう態度さえきちんと見せておけばたいていのことはうまく運べるものなのだ―そんな風にして父は長いこと私に騙され
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