昨日は孤独な世界?/錯春
 
どん膨らんでいく。
なにかを孕むかのように。

ケイタは大切なことだけ、忘れることにしていた。
それは授業参観のときに珍しく白粉をはたいた母親の顔だったり、やたら「ごめんね」を繰り返しながら処女をくれた同級生だったりした。

(あー、俺もはやいとこ「初恋?そんなこたぁ忘れたな」とか、ほざける男になってみたいでちゅ。なんちて)

彼の当面の目標は初恋を忘れること。
きっとそれは、思い出した際に、甘美な痛みを与えてくれるだろう。
だが、それもすべては憶測。
だって彼は恋をしていない。

(不意にコンドームの皮膜が限界値を越える。破裂した水と精液は瞬時に飛散して、狂暴な霧になる
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