ハイツユカリだとか、中町コーポだとか、なんだかそんな感じの名前のついたアパート/リヅ
ある男の子が自忘自失のままバタフライナイフを購入する。例えば三人目の女の子の運命の人が、彼女の住むアパートの二階へと引っ越すために荷物をまとめ終える。例えば―――しかし、わからない。何が起こるかは。実際に起こってしまうまで、誰にもわからない。
鍵のかかった、その平凡なアパートの屋上に、神様がたたずんでいる。彼は思う。すべてのことは起こりうる、と。「よくある話だよ」。―――そう、三人の平凡な女の子。彼女たちの住むアパート、過ごす時間、好きな男の子、読んでいる雑誌、嫌いな食べもの、それは別のありかたとして、すべて、同じ、私たちの。
三人目の女の子は待っている。何かが起こるのを。何かと出
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