ハイツユカリだとか、中町コーポだとか、なんだかそんな感じの名前のついたアパート/リヅ
 
よくある名前だから。一人目の女の子と三人目の女の子は、切なく美しい恋の物語を多少の羨望と嫉妬を抱きながら聞いていた。

 三人目の女の子も恋が好きだけれど、なんとなくそんな気がしてはいるのだけれど、実を言うと、恋って現象がなんなのかよくわからないと思っている。二人の友人には言っていない。一人でこっそりと思っている。だけど、うん、そう。よくわからない、わからないんだけれど、もし、叶うなら―――もしも叶うなら、たった一人の男の子を、思いきり愛してみたい――。彼女はどこにでもいる女の子。名前のいらない女の子。こっそりとそんなことを思っている。愛することで何が起こるのか彼女は知らない。でも、何かが起こ
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