ハイツユカリだとか、中町コーポだとか、なんだかそんな感じの名前のついたアパート/リヅ
二人目の女の子は終わってしまった恋の話しかしない。それは彼女が「期待しすぎたり、その結果失望したり、そんな恋の最中よりも、いつかの思い出の方が綺麗」だと感じているからだ。彼女は恋人を追い払ってから――彼女に言わせれば“恋人が”去ってから――、一人きりの部屋で彼女は恋を振り返る。何度も思い返す。そしてきちんと整理する。美化していく。何度でも噛み締める。一人きりの部屋で。あるいは昼間のカフェで。夜のバーで。天気の良い午前の、大学のキャンパスかもしれない。彼女のため息を聞きつけて男の子たちが集まる。お姫様を助けて王子様になるために。そして彼女は終わりのための恋を始める。彼女の名前は思い出せない。よく
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