解凍パニック/木屋 亞万
 
通常の2階分のスペースを持ち
巨大な直方体の構造となっているのだが
そのフローリングの上に同じく直方体の氷の塊が
すっぽりと納まっているのだから驚いた

透明度の高い氷の中でマンモスの目は開いている
じっとこちらを見ている、あるいは下を見ているだけかもしれない
その眼差しは冷たく、まばたきをしないので睨まれているような気にもなる
憐れみ、嫌悪、あきらめ、友好、かなしみ、ほほえみ、怒り、目は雄弁すぎる

真新しい校舎に何千年も前からいたように立っているマンモスが
解凍されていく、圧縮されてきた過去の感情が私の中に溢れてきた
涙の強襲に涙腺の封鎖は間に合わず、雪解け水に混じって
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