<SUN KILL MOON>/ブライアン
 
 文章を円還させよう。当時「静寂」を求めいていた。けれど、実際に求めていたものは他者だった。もちろん、「自分」を含めた他者だ。「自分」とともにいる「他人」を。けれど、「自分」が他者であったならば、他者さえも存在しないのではないだろうか。奇妙な矛盾だった。「自分」はいた。それは感じられた。「自分」も「他人」もいないなどありえはしない。
 
 文明が発達するにつれて、人は知覚作用を変化させてきた。かつての人は「他人」も「自分」も識別しようとはしなかったのではないか。視覚化させることで、人はそこにある「存在」を信じた。視覚に対する絶対の信頼を築いた。文字、印刷、テレビ、インターネットによって、視覚作
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