暗い森/ふるる
決して目覚めることはない少女
森は少女を目覚めさせないよう
微かな声で子守唄を唄う
歌声が聴こえるのはそのせいだ
それを聴いた鳥は涙を落とし
また言うだろう
「さびしい、さびしい」と
そしてまた
朝焼けに溶けきれなかった
だれかの夢の残骸を
ついばむだろう
少女はどこへも行けず眠ったまま唇を動かす
歌声が聴こえるのはそのせいだ
鳥が滅多に鳴かないのは
鳥がすぐに死んでしまうのは
そのせいだ
もう
ここは冬になってしまった
迷い人のあなたは
ここから朝の匂いを辿っていけばいい
薫りたかい花の咲き乱れる
新緑と風に満たされる
春や夏へ
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