余計なものを連れてくるから/ホロウ・シカエルボク
 
しかった、でも君はそれに気づかないふりをした
なんたって女の髪の毛には洗濯ばさみがふたつくっついているのだ
目的地まで残り二駅分
途方も無い時間に思えた
駅の出口の自動販売機でカフェ・オレを買ってだらだらと飲んでいると、すごく時間が過ぎてからさっきの女が改札から出てきた
女は君の前に立った
髪の毛の洗濯ばさみはひとつだけになっていた
ミステイクなのか意図的なものなのか君には理解出来なかった
女はしばらく黙ったまま君のそばに立って
君のことを長く見上げていた
彼女は不自然なほど身長が低かった
「○○君だよね?」
自分の名前を初めて聞いた気がした、確かに
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