幻覚の蛙/ホロウ・シカエルボク
 
それは俺が複雑化されたものであり、やつが非常にシンプルな成り立ちをもったものだからだ、俺が人間で、やつが幻覚の蛙であるからなのだ…待てよ、何か変だ、何か…
「なぁ」
ふいに蛙が俺に話しかけた、まだいたのか、と俺はつい言ってしまった
「君は少しひどい口のきき方をするね」 「謝ったほうがいいのかな?」
どっちでもいい、と蛙は言った「そろそろ俺は行かなくちゃいけないんだ」
「もうすぐ雨が降る、俺は俺の成り立ちに従って雨に向かって鳴く」
「君が考え事をしてるおかげで最良の時を少し逃してしまった―でも、まだ間に合う、まだ」
「判ったよ、存分に存在してこい」
蛙は窓のサンに身を乗っけた、そして
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