月の光/xxxxxxxxx
彼女は耳がきこえない
口をきくことができない
わたしは問うた
生きる理由を。
彼女はわたしの目を見て
そしてまた淡々と
奏で始めた。
彼女は耳がきこえない
口をきくことができない
それが、答えなのか。
空の上の白いテラスで
彼女は奏で続ける
彼女に表情は無く
それは澄んだ水鏡のようで
ただ、聴く者を
正確に、残酷に、
夜に映しては
溶かしてゆく
わたしは何か
取り返しのつかないものを
ほどかれてしまったようで
深い藍の中に
溶けてゆく音を
ただ呆然と眺めていた
穴のあいた器のように
わたしはわたしから
漏れ出てゆく
彼女の奏
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