幽霊/天野茂典
ではない ぼくはおもった
だからといって110番通報することも
バイクを下りて そっと介抱してやることも
ぼくにはできない ぼくは足のない蛇が
大嫌いなのだ いつも足が竦んでしまうのだ
とうてい手当はできない ぼくは轢き逃げ
することにした なんだかたたられるような
気がした 気味が悪かった からからの蛇が
道の真中に 紐のように落ちている光景が
おもいやられた ぬめぬめのはらを夏空にむけて
蛇は生涯を終えるのだ バイクに轢かれて
旨いものも食ってきた 異性にも恵まれた
もういうことはない 炎天下の舗装道路で
じりじり皮
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