幽霊/天野茂典
り皮膚を焼かれながら 渇ききって
塵になるのだ 粉々に砕けて粉塵になるのだ
夏の終わりには もう影も形もなくなって
空気を汚す光になっているだろう
もう藪を爬行することもないのだ
天敵におわれるこもないのだ
藪には燃えるような狐のかみそりが なにごとも
なかったように咲いていた
幽霊のような花だった
ぼくのバイクは林道の頂まで走ってくると
おなじ道をひきかえしてきた
注意しながら走ってきたが どこにも蛇の
なきがらは発見できなかった
蛇は蒸発したのだと ぼくはおもった
2004.8.1
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