詩学社、そして寺西さん/角田寿星
れは少ない額ではないけれど、ぼく個人でも肩代わりが可能な金額だった。
つまりその程度の金で、詩学社はツブれた。
でもそれをやると、ぼくは離婚しなきゃなんなかっただろうし、寺西さんは病身を押して働かなきゃなんなかっただろうし(だって後継者がどこにいる?)、ぼくも運転資金の捻出のため、身を粉にして働かなきゃなんなかったろう。そして現在の経営状況では「融資」したところで、回収の可能性はゼロだった。
ぼくは追加融資をしなかった。結果的に、ぼくが詩学社に、最後の引導を渡した。
ぼくは在庫整理に集中した。借金の肩代わり云々には固く口をつぐんで、偽善的かつ姑息的手段であることは承知のうえで。一方、積
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