詩学社、そして寺西さん/角田寿星
いたとしても、借金をチャラにすることは不可能だった。
絶望的な状況に変りはなかったけど、寺西さんは非常に喜んでいました。注文が殺到したことより、みなさんからの励ましが、ほんとに身に染みて嬉しかった、と仰っていた。ぼくは「寺西さんがコツコツと播いた種がようやく実ってくれたんですよ」と返答したことを思い出します。
約80件の注文をいただいて、収益は、破産申請の弁護士費用にありがたく使わせていただく、とのことだった。
詩学社の衰弱は相当なものでした。最終的な定期購読者は250人。わずか、というべきでしょう。その人たちへ廃業の通知をする葉書代にも事欠く有様でした。
そして、社の借金総額。それは
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