爆裂(上、後)/鈴木
 
に引っ込め、爪を出した前足はこちらの肩に照準を合わせ、襲ってきた。スローだった。野次も低く、遅くなっていた。祥平は俯いて、構えを解いた。瞬間に視界が黒く塞がれて激しい痛みと苦しみに加え胴体の振り回される感覚を最後に意識が途絶えた。死んだ、と思った。だから彼は生きていた。どこまでもなだらかに続くかと思われる荒地をうつぶせに低空飛行していた。遠く両斜め後方に禿山、どちらの頂きにも街があった。
 ――起きたか。
 砂色に澄んでいた眼下に身体とタテガミが現れて、そういえば顔中くさい。背に祥平を乗せて雄獅子は歩く。
 ――食べなかったの?
 ――食べなかったよ。
 雲はなく白い空に太陽もないが適温
[次のページ]
戻る   Point(0)