爆裂(上、後)/鈴木
 
適温で湿度も上々、まばらに生えた草木は倒れるか切り取られるかしており、たまに水が沸いていた。
 ――どうして?
 ――人間、けっこう迷い込んでくるよ。普通ならぶっ殺してやるんだが、気が変わった。里に送るよ。
 ――里?
 速度が落ちた。
 ――森から来たんじゃないのか?
 ――街じゃなくて?
 ――あっち出身なのか?
 ――わかんない。
 雄獅子は末尾を上げて唸ると黙り、池を見つけ、駆け、ほとりにて降りるよう促し、身軽になると飛び込んだ。平泳ぎまでした。
 ――話せ。
 話した。六年間の実人生を思うさま喋った。茜との仲違いや勝也への服従には言葉が詰まったけれども、幻の側へ来る
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