爆裂(上、前)/鈴木
―『動物大騒擾』! 愉快々々……。
揺れていた。肩を前後に振られていた。名を呼ぶ声が聞こえる。陽子が心配そうな顔をしている。周囲は壁もそのままに錆付いた扉があるばかりだった。体育座りのまま妄想へ埋没していたようだ。
――気がついた?
祥平は立ち上がり口をぱくつかせた後、陽子の胸にくず折れた。
C棟の階段を共に上る。雲の去った濃紺の天に星がまばらに散っていた。陽子の手はじんわりと湿っていて滑りそうだったからきつく握り締めた。たまに向こうも力を込めてくれるのが嬉しくてにっこりすると乾いた涙の筋が痒かった。途上なにを話したかは覚えていない、無言だったかもしれない。玄関の手前で彼女は
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)